言葉と。
まずはじめに言葉があった 言葉の重さを理解せずに気安く用いる時代になっているように思います。 SNSの時代、デジタルネイティヴ(そしてこれすら死語になりつつある)の私たちは、独り言ですら電子の海に流す。 行先無く呟かれた言葉たちはボトルレターの…
夢をみていた。 三日月のえくぼに溜まった雨水。 騒々しい夕暮れ真っ白な脅迫。 夢をみていたひたすら同じ夢を。 ここにもいなくてそこにもいる。 ただならぬ陽気の逆立ちする南向き。 等間隔の左腕がゆっくりな太陽にめがけて。 ぐうぐうエンジンが声をひそ…
みずちの腹は少女に似て。 その口の柘榴の色は、きっと少女の心臓の色。 水を弾く密な鱗は、未熟な彼女の硬さを思わせる。 とぐろを巻く姿は、その場にとどまるために疾走する赤の女王。 それはおそらく明日の彼女。 潰した柘榴を彼女が口にする時、ひとかけ…
薄灰色の光を 鈍く通す羽の 寄り集まったうでを拡げて わたしは 地球 の引力にうなだれて捕らえ られており その時左眼の端 から 景色を閉じこめた虹 色がひっそり とすじになって頬 を往った 白く塗られた壁 の剥がれ かけた蔵が わたし のほうに影を濃く …