のまどのまど

音楽や芸術について、気ままに書いたり描いたりする雑記ブログです。

みずちの腹は少女に似て。

みずちの腹は少女に似て。

    その口の柘榴の色は、きっと少女の心臓の色。

    水を弾く密な鱗は、未熟な彼女の硬さを思わせる。

    とぐろを巻く姿は、その場にとどまるために疾走する赤の女王。

それはおそらく明日の彼女。

 

潰した柘榴を彼女が口にする時、ひとかけらの種がこぼれた。

    それは重力を感じさせながら地面に落ちた。

 

季節を巡れば種は芽を出して。

    大きく育ったその樹にはみずちが巻きつくだろう。

 

少女に差し出す柘榴を選ぶために。

 

あだむといゔに知恵の実を与えたみずちは果たして雄だったか。

 

みずちは少女に柘榴を与える。

    その実に似た心臓の彼女に。

 

みずちは少女に柘榴を与える。

    やがて己になる彼女に。

 

真っ赤な舌を覗かせながら、喰べてごらんと唆かす。

 

みずちの腹によく似た少女に。