みずちの腹は少女に似て。
みずちの腹は少女に似て。
その口の柘榴の色は、きっと少女の心臓の色。
水を弾く密な鱗は、未熟な彼女の硬さを思わせる。
とぐろを巻く姿は、その場にとどまるために疾走する赤の女王。
それはおそらく明日の彼女。
潰した柘榴を彼女が口にする時、ひとかけらの種がこぼれた。
それは重力を感じさせながら地面に落ちた。
季節を巡れば種は芽を出して。
大きく育ったその樹にはみずちが巻きつくだろう。
少女に差し出す柘榴を選ぶために。
あだむといゔに知恵の実を与えたみずちは果たして雄だったか。
みずちは少女に柘榴を与える。
その実に似た心臓の彼女に。
みずちは少女に柘榴を与える。
やがて己になる彼女に。
真っ赤な舌を覗かせながら、喰べてごらんと唆かす。
みずちの腹によく似た少女に。