昭和歌謡は本当に現代のJ-POPよりも優れているのか。
みなさんこんにちは。
今日は前々から疑問に思っていた、「やっぱり昭和歌謡の方が良いよな」という考えに対して色々書いていきたいと思います。
動画投稿サイトでのコメントを見ていると、やたらと昭和歌謡を礼賛する声で溢れているんですね。
曰く、「俺たちの時代が一番だ」
曰く、「自分、世代じゃないけどこの時代の歌が一番好きッス!」
果たしてこの見解はどこまで有効なんでしょうか。
実際にそうじゃないの?という方や
疑問に思ってた!という方も
読んでいただけたら嬉しいです。
まず個人的な立場を表明しておくと、「どちらでもない」です。
中立と言うか、そもそも分離して考えうる問題ではないんですね。
昭和歌謡>J-POP派
まずは、昭和歌謡優勢派ですが、主張されるポイントは大きく分けて2つあると思います。
①「楽曲のシンプルさ」
わかりやすい、と言う言い方をわたしはよく使うんですが、例えば1番のメロディーを覚えればその曲を全部歌える、とか、初めて聴く曲でもなんとなく次の音が予想できる、とかですかね。
実際楽譜を見てみると、驚くほど簡素な構造になっていることが多いです。和音も単純で、メロディーも言ってみれば、ありきたり。
これを元に繰り出されるのは「今の曲はややこしすぎてよくわからない」「歌詞が多すぎて(細かすぎて)聴き取れない」などなど。
(余談ですが、音楽番組で歌詞が表示されるようになったのは、サザンが最初らしいです。)
②歌唱力の高さ
よく、昭和歌謡歌手は歌が上手い、と言う言い方がされます。
音響に頼らず、自分の歌声のみで有名になった印象が大きいのではないでしょうか。
例えば、キーヨこと尾崎紀世彦さん(わたしも大好き)や布施明さん、加藤登紀子さんや、ちあきなおみさんなどなど。
編集技術が低かった時代にあれだけ歌えるのは、歌唱力があるからだ、となるわけです。
一方で現代はと言うと、か細く弱々しい声で歌う歌手のなんと多いことか!情けない。
歌手の未熟さを編集や音響でごまかしている。
などなど。
昭和歌謡支持者への反論
以上の主張に対して、反対派はどのような意見が言えるでしょうか。
全体的に言えること
そもそも、昭和歌謡と言う昔の曲が良いと感じるのは、思い出の多くが淘汰されたものであるのと同様で、良いと感じられるものだけが、淘汰され残っているからである、と言う反論が可能です。
当時ですらひどい曲や歌手はあったでしょうし、出る曲全てが名曲ではなかったはずです。
同様に、現代の若者が「俺今っ子だけど昭和歌謡の方が好きだぜ」と言うのも、淘汰されたものにしか出会っていないためではないか。
①についての反論
実際のところ、あまりにシンプル(単調)なものが続くと聴き手は飽きてしまう、と言う問題があります。音楽産業である以上、他との差別化をはかる必要があるし、競争も生まれる。
同じような現象は、いわゆるクラシック音楽の歴史の中でも度々起こっています。
音楽のさがと言えるかもしれません。
つまり、「日本における音楽」と言う巨視的あるいは通時的な見方をとると、この主張は単なる個人の好みの問題に収斂していきます。
②についての反論
これについても、ある程度は通時的な立場を取れば反論できる部分があります。他との競合によって差別化をはかると、必然的に新しい試みや技術に向かうものだと思います。
また、歌唱力については、今日でも有名な名歌手であるフランク・シナトラの話が参考になるかもしれません。
彼は、マイクの技術が発達して以降は、声を張らず、ささやくような歌い方(クルーナー唱法と言います)にシフトしていました。
歌唱力一本のイメージがあるシナトラも、その当時出てきた新しい技術を取り入れた歌い方をしていたのです。
あるものをうまく使う、と言う考え方はある種非常に合理的であると思います。それによって表現の幅が広がる(単調から脱する)のであれば、なおのこと有用ではないでしょうか。
昭和歌謡と言う幻想
結論としては、「どちらかが優れている」と言う問題ではない、となるかと思います。
結局日本の世俗的な歌謡曲として考えるならば、昭和歌謡もJ-POPも分けて考えられるものではないし、もっと言うならば同じ直線上に存在しているものなんですね。
動画投稿サイトで、J-POPの動画に対するコメントには、あまり「やっぱりJ-POPが最高だぜ!」みたいなのないんですよね。
あるのは昭和歌謡の動画に対してだけ。
きっと、コメントを残している人たちはあるはずのない栄光のような幻想を、昭和歌謡に見ているんじゃないでしょうか。
思い出にすがると、過去は輝いて見える。
と、言うことで、つらつら書いてみました。
もっと具体的な資料が提示できたらもっと説得力が出たんでしょうけど…。
でも、一つ思いを形にできたので満足です。
お疲れ様でした。
それでは、また。